データは現場に還元されてこそ意味がある

──プラットフォーム学を志した理由は?

充実した支援制度は魅力でした。どんな研究でも資金の問題はつきものです。単位が取れるだけでなく、金銭的な援助まで受けられるプログラムであるという点は博士課程を見据えている身としては大変助かりますし、応募しない理由がないと思いました。
もちろん「お金さえ貰えればどうでもいい分野でもやる」というわけではなく、内容にも興味がありました。後述するように、私は研究を通じて得たデータを現場に還元することが重要だと思っています。そのために必要なデータを集める方法は学んできましたが、それを処理して応用するという点においてはまるっきり浅学であり、プラットフォーム学はそこを埋める助けとなってくれるかもしれないと思いました。

──現在取り組んでいるテーマは?

日本に土着する天敵を用いた農業害虫の防除です。害虫「アザミウマ」は農薬に対する抵抗性が非常に高く、アザミウマを捕食する天敵である「カブリダニ」を用いた防除が行われます。しかし、天敵として圧倒的なシェアを占めているカブリダニは外来種であり、日本の生態系に影響を与える可能性も否定できません。そこで、利用可能性が明らかになっていない土着のカブリダニを調査し、将来的な代替を目指しています。

──プログラムを通じて得たものは?

他分野との交流です。研究の中身ではなく、研究をするにあたっての有益なツールや情報、心構えなどを共有できるのはありがたいと思っています。

──あなたが作りたいプラットフォームは(ご自分の研究をもととして)?

(販売されている天敵と異なり)土着天敵を有効利用するためには、多くの情報が必要となります。農家にそこまでの苦労を強いるのは高いハードルになるでしょう。そこで、天敵の名称などを入れるだけで、種の判別やデータベースを参照した利用方法まで出してくれるようなシステムがあるといいと考えています。

──いまの世界をほんの少し良くしようと思ったら、何が必要だと考えますか? もしくは何をしたいと思いますか?

前述の通り、研究を机上の空論で終わらせないこと。研究者が手に入れたデータは、利用可能な形で現場の人間に還元されなければいけないと思っています。学会に参加したり、現場に行ったりすることで、その思いが一層強まりました。

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