低消費電力で動くAIを研究、手元で動くAI端末を

──プラットフォーム学を志した理由は?

さまざまなプラットフォームを学び、他の研究分野のお話を聞くことで、新しい課題感を見つけたいと思い志望しました。

──現在取り組んでいるテーマは?

「スパイキングニューラルネットワーク」という深層学習の一分野です。低消費電力でAIの推論をする技術で、スマートフォンなどのエッジデバイスにおける高度な認知処理が期待されています。私は、このスパイキングニューラルネットワークのハードウェアからアプリケーションまでを対象に、この深層学習を使ったエッジ向けAIシステムの社会実装に向けて研究しています。例えば、この深層学習に特化したハードウェアが開発されていますが、それが理論的な値から離れてしまうため、それを補正するためのシステムを開発しています。また、スパイキングニューラルネットワークは低消費電力で推論可能ですが、従来の深層学習よりも推論時間が増加する課題があります。そこで今まで動かしていなかったパラメータを変化させることで、効率的に推論可能になります。
他にも、機械学習のアプリケーション、特に画像生成について研究していて、スタイル変換というある画像の特徴を別の画像に適用する仕組みなども手掛けています。このように私の研究では低消費電力推論が可能な深層学習を用いることで、ユビキタスなAIシステムの開発に向けて研究しています。

──プログラムを通じて得たものは?

他分野の知識が学べる講義や学生間で交流する機会がたくさんあるので、視野が広がります。結果として、他の研究ではここが足りないと分かったり、こういった技術が必要とされていると分かったりできます。また、フロリダ大学の学生との交流会では、意見を主張し合う機会も得られました。結果、言語を学ぶことの重要性も再認識しました。

──あなたが作りたいプラットフォームは(ご自分の研究をもととして)?

誰でも何処でも使える高度な認知処理が可能なプラットフォームを構築したいです。プラットフォームを構成するデータの収集、分析、利活用の3段階の中では、特に分析と利活用の部分に自分の研究を適用することで実現できると考えます。例えば、サーバーだけでの処理だけでなく、ユーザーの手元にある端末で簡単な推論、より難しく負荷のかかる問題はサーバー側でという分担も可能です。そうすれば、スマートフォンのようなエッジデバイスにおける推論だけでなく、通信が難しい環境でも推論ができますし、宇宙探査ロボット、深海ロボットなどでの応用の可能性も広がります。こうした使用者や場所を問わないプラットフォームを実現するための深層機械学習モデルを作りたいと考えています。

──いまの世界をほんの少し良くしようと思ったら、何が必要だと考えますか? もしくは何をしたいと思いますか?

ChatGPTのような大規模言語モデルが手元で動いて、日常生活の中で人並みに賢いサポートシステムが使えるようになれば、より便利な社会が実現され日常に彩りが加えられると考えます。AIがそのぐらい身近なものになってほしいと思い、低消費電力で推論可能なAIを実現したいです。

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