地下水の動態を数理モデルで推定、有効な水利用を考えたい
──プラットフォーム学を志した理由は?
プラットフォーム学という概念に共感するものが多かったことが志望理由です。世界には現在、GoogleやYahoo!など、支配的な企業が独占しているコミュニティースペース(共有空間)がありますが、これを「一人一人が自立して作れたらいいな」と思いました。先が不透明な世の中で「自分の手で形あるものを作りたい」「実践的な技術を身につけたら、将来どう転んでも大丈夫だな」とも思っています。プラットフォームはオープンソースのように誰でも提供し、アクセスできる開かれた場所。成果を公表できる場としてもいいなと思っています。
──現在取り組んでいるテーマは?
地下水の動態を偏微分方程式を用いて可視化し,効果的な水利用を実現するための研究をしています。地域の水循環を数理モデルで予測し、大雨などの極端現象にも備えられるようにしたいと考えています。(地球上の水循環を考える)水文学の分野ではデータがたくさんとられていますが、その背景にあるメカニズムはまだ明らかになっていないものが多くあります。
特に地下水については生態系に与える影響も大きいといわれているのですが、見えないからよく研究されていない面もあります。研究としては、生物が少ない砂漠の方が作りやすく、雨が降り、次に旱魃が来るのはいつかなどを(経済の世界でも用いられる)確率微分方程式を使って解くことなども考えられます。
──プログラムを通じて得たものは?
機械学習など、世間でよく耳にする最先端の話題に触れることができました。私の研究分野ではなかなか出てこない話も多く、世の中が求めているものがしっかりと取り上げられているなと感じています。ランチミーティングでは、暗号の研究をしている人の話を聞くことができました。私とはまったく別の分野となりますが、「数理系の知識があれば、概要は理解はできるのだな」と思えたのも発見です。
また、プログラムを通じて、プラットフォームに対する認識が少し変わりました。たとえば、今までWi -Fiはプラットフォームだと考えたことはありませんでした。
──あなたが作りたいプラットフォームは(ご自分の研究をもととして)?
世界各地の水資源情報のデータを集め、適切な数理学の手法を使ってデータを解析し、実際の問題に適用できるプラットフォームです。旱魃の予測や大雨による洪水などを予測できるようにしたいと思っています。
──いまの世界をほんの少し良くしようと思ったら、何が必要だと考えますか? もしくは何をしたいと思いますか?
21世紀は「水の世紀だ」とも言われています。水利用の重要性は上がっていくと思います。水の研究というとこれまでは海洋や深海などが多かったのですが、そんな中、地下水はブルーオーシャンと言える分野です。
水資源の利用慣行(水利権)も重要なトピックスです。行政などトップダウンで決めていくだけでなく、利用者からのボトムアップ的な意見も重要になっていくので、こういった視点も考慮しながらデータとして水を扱い、知見を交えながら、適切な水の利用料をアウトプットするなど、そのデータを利用する最適な制御法を確立していければいいなと考えています。