DAOを通じて農村が抱える少子高齢化や過疎化の問題を解決していきたい
──プラットフォーム学を志した理由は?
私は修士課程から、ウェブ技術を活用した農村コミュニティの課題解決をテーマにして研究を進めています。農学研究科だけでなく、情報学と連携することで最新技術をキャッチアップしたり、課題解決に対する技術面でのアプローチも増やせると考えたので、博士後期課程から編入しました。
──現在取り組んでいるテーマは?
研究テーマはWeb 3.0技術を活用した農村地域における課題の解決です。DAO(分散型自立組織)やNFTを使い、関係人口や、近隣集落と共同で、農村コミュニティの課題解決をしたいと考えています。国内の農村地域は少子高齢化や過疎化が進んでいます。また、単独集落では課題解決が難しい状況といった課題も抱えています。そこで、オンラインプラットフォームやDAOの可能性に注目しています。過疎地域や条件不利地域には、ムラ村社会が残っており、気軽に外から入っていけない側面もあります。直接地域に脚を運ばなくても、オンラインを通じて関わり合い、交流できるものを作っていきたいと考えています。関係人口にとってメリットを感じられるとともに、農村地域に多い高齢者も使いやすいプラットフォームを通じて様々な課題の解決を図っていきたいです。
──プログラムを通じて得たものは?
情報学分野のトレンドや、基礎的な知識を得られたと思います。理解を深めるという側面だけでなく、イノベーションとは何か、持続可能なプラットフォームとは何かなど、考えるきっかけを与えられたと持っています。講義や講演には、研究者だけでなく起業家の方々も登壇しています。ビジネスを通じて、世の中に対して、10年、20年先を見すえた貢献を考えるという視点は、私自身のテーマに通じる部分がありますし、考え方に対して影響を与えてくれています。
──あなたにとってプラットフォームとは?(ご自分の研究をもととして)
農村地域で、DAOを活用して課題解決ができる場を作りたいと思っています。こだわっているのは、住民主体で進める点です。地域社会におけるDAOの応用事例には、山古志村の例などが既にありますが、地域に住む人の意見を反映せず、関係人口の側が勝手に作るものではいけないと感じています。住民の人が自ら作って使ってもらうことで、地域にお金が入ってくるようにしたいです。そのためには、コミュニティ的な要素=人と人とのつながりが必要です。経済的な支援では、クラウドファンディングのような取り組みもありますが、トークンを使った投票では住民全てが意思決定に関わり、そのインセンティブを受け取ることができます。今までは通りにくかった女性や若者の意見も反映でき、解決したい課題があればだれでも参加できる仕組みが必要です。
──いまの世界をほんの少し良くしようと思ったら、何が必要だと考えますか? もしくは何をしたいと思いますか?
先進国では都市部に一極集中により、弊害が生じています。それを分散したら世の中がよくなるのではないかと考えています。都市部が成り立つのは、農村部から食料の供給があるためですし、農村部も都市部と経済的な交流や人的な交流があるから成り立つ。つまり、都市と農村は共存していることを知ってもらいたいです。そのために、DAOなどのプラットフォームを使ってもらいたいと考えていますし、農村地域と関わる都市住民創出に向けて私も学術的な貢献だけでなく、日々の暮らしでも農村を意識して貢献していきたいと思います。