Interview

プラットフォームそれ自体が必ず正解を生むわけではない、創発による社会の進歩を

松木 彰

松木 彰さん

情報学研究科
社会情報学専攻

Outline

──プラットフォーム学を志した理由は?

防災研究では、各災害に特化した専門研究型が主流でした。しかし、東日本大震災では、個々に扱われてきた災害が複合的に入り混じる事象が発生しました。これまでの専門研究型の取り組みでは、今後の災害の様相をとらえきれません。統合的、俯瞰的、時間的に連続した情報を集め、予測していくことが求められています。多くのデータが蓄積され、ビックデータとして整理できる環境ができつつあります。これは確かですが、それだけでは足りません。災害に際しては全員の足並みをそろえて事に当たり、同じ目標を持って対応しなければなりません。そのための俯瞰的な情報、共通の目を持つことが必要だと考え、プラットフォーム学のプログラムに参加しました。

──現在取り組んでいるテーマは?

災害が発生してからの対処である住民の避難や行政の応対である救助など、災害対応のシミュレーションを開発しています。災害の被害予測や、それが社会にどれだけ影響を与えるかについてはたくさんの研究がありますが、それを踏まえてどのような対応をすべきかについては適切な議論はあまりなされていません。一方で、災害発生の裏では、救急車での搬送やインフラ復旧、避難上運営、食糧配布問題など、さまざまな課題が発生しています。それらは独立して発生しているのではなく、複雑な関係性を保っていると思います。一つ一つの要素について言えば、それに特化したプラットフォームやサービスはあるかもしれません。しかし、それらを俯瞰できるプラットフォームはないのが現状です。各分野のデータが集められてきていますが、異なった分野のレイヤー間の影響は把握できていないのだと思います。そうした複雑な事態を把握するため災害の予測モデルを活用しながら、人・行動のシミュレーションを通じて検証できる場を提供できないかと考えています。

──プログラムを通じて得たものは?

プラットフォームがどう適用され、社会を駆動するのか。逆に駆動しない場合はなぜなのか。その線引きについての意識が高まりました。プラットフォームそれ自体が必ず正解を生むわけではありません。データを収集し、統合し、整理すれば、完成するわけでもありません。ユーザーの課題に応える設計にしなければなりません。この課題は既存技術の応用でできる解決できる場合も多くあります。例えば、農業にロボットが入れば何かが解決できるかもしれません。プラットフォームには必ずそれを使うユーザーがいて、介入するから解決ができる。こういったシステム全体のあり方が学べたような気がします。

──あなたにとってプラットフォームとは?(あるべき姿、作っていくべき未来など)

これまで難解で何処か遠いものであった専門的知識や技術に、すべての人が平等にアクセスでき、そこにある技術(道具)を使って専門家以外でも新たなサービスを創発できる場所だと思います。一般の人でも道具を組み合わせて何かを作りだせる。誰かのサービスを組み合わせて自由に作れる。そして、新たに生まれたサービスがまた誰かのサービスの部品となり、社会全体の技術や産業の進歩につながるのだと思います。プラットフォームを作る立場であるのであれば、創発が生まれる環境を整えることも視野に入れていきたいです。

──いまの世界をほんの少し良くしようと思ったら、何が必要だと考えますか? もしくは何をしたいと思いますか?

日本には電子決済、SNS、音楽、サービスなどさまざまなプラットフォームがあふれていて、プラットフォームを束ねるプラットフォームが欲しいと感じるほどです。そこには、機能が充実していても、ユーザーにとっては使いにくいといった、いろいろな問題が出ているとも思います。誰かが何かを独占するのではなく、ピースが埋まっていないところを作る。その結果として全体がうまく軌道に乗るようなプラットフォームが生まれてくる。世の中と共存し、より良くしていく協調路線デザインが必要だと思います。

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