──プラットフォーム学を志した理由は?
専攻とは別の学術分野を統合して物事を見るという考え方に感銘を受けました。私は熱帯農業に関する研究をしていますが、そのためには経済学、植物生理学などを踏まえた、多角的に物事を見る力が大事だと考えています。自分の考えとマッチしているし、その考えを深められたらと思って参加しました。
──現在取り組んでいるテーマは?
バングラデシュ沿岸部のダイズ栽培農家の農家経営と土地所有の大きさの関係に着目した研究をしています。バングラデシュ沿岸部はヒマラヤ山脈から流れてきた堆積土で土地が形成された世界最大級の熱帯デルタです。都会で土地をもたない人々が移り住んで農業を主体に生活をしていますが、半数以上が零細農家です。バングラデシュで本格的にダイズ栽培が普及したのは1990年代初頭と最近のことです。この地域は熱帯モンスーン気候でダイズの栽培に不向きな環境ですが、栽培面積は沿岸地域を中心に年々拡大しています。ダイズは油糧とタンパク質を多く含むため、バングラデシュの経済発展には欠かせない大事な作物です。しかし、果たしてダイズ生産を熱帯デルタでおこなうことが零細農家にとって合理的な選択となっているのでしょうか。彼らがどういう農業をしているのか、土地の面積が少ない中でどのような方法を取っているのか、経営は上手く行っているのかなどを統計的な手法を通じて、定量的に見ていきます。例えば、土地の所有規模と所得の関係、所有面積や資産の状況で有利不利が変わるのか、適切な作物は何かなどです。彼らの農業経営を知ることは農業の持続可能な発展に欠かせません。
──プログラムを通じて得たものは?
端的に刺激を得られています。農学や植物は好きですが、情報学やIT技術の活用は別分野というか、苦手意識がありました。しかし、自分の研究を情報学と組み合わせれば、バングラデシュ沿岸部で農家経営の観点で持続可能な農業を作るためのプラットフォームが作れるかもしれません。自身の研究を広く社会に還元できる可能性にわくわくしています。現場に研究成果を還元するために、自身の研究をどうプラットフォームに発展させるか、と意識するようにもなりました。
──あなたにとってプラットフォームとは?(ご自分の研究をもととして)
バングラデシュ沿岸部に住む、農家の生活水準を上げられるものです。農業経営は、自然環境条件と社会条件の中から最適な選択をすることが求められます。その地の気候、環境に最適な作付品目・品種をオープンリソースで農家が確認できるようになるといいなと思っています。バングラデシュでは、気候変動の影響も大きな問題です。AIなどで災害発生予測ができるようにすれば、余計なリスクテイクを減らせるかもしれません。また、社会条件としては、南アジアでは零細農家はリースの土地で営農する農家も多いため、農家間で土地を貸し借りする文化がありますが、リースする側とされる側の利益を最大化できるシステムが作られたらいいな、と思っています。
──いまの世界をほんの少し良くしようと思ったら、何が必要だと考えますか? もしくは何をしたいと思いますか?
プラットフォーム学のプログラムには、情報学、農学など、いろいろな研究のバックグラウンドを持つ人が参加しています。その世界が大きく広がって行けばいいと思います。私は栽培試験をずっと続けてきましたが、博士課程では社会科学の分野に近い研究をしており、試行錯誤しています。やり方や悩みをいろいろな人に聞ける環境、それがまさしくプラットフォームだと思います。他分野の研究者とのつながり、コミュニティを広げていけるプラットフォームがあると研究も捗るし、新しい発想にも繋がってよいことだと考えています。
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