──プラットフォーム学を志した理由は?
植物の光合成に関するデータを集め、大規模データとして活用したいと考えています。植物の光合成は、必ずしも光を当てれば進むわけではなく、環境ストレスの影響を受けます。以下に述べる気孔や、その他さまざまなメカニズムで光合成は制限されることが知られていますが、野外でそれらがそれぞれどの程度光合成に影響を与えているのか、まだまだ知られていません。そこで、将来は世界各地にセンサーを設置してデータをとりたいと思っています。その遠隔通信や、大規模データを処理する技術的な部分を得たいと思って志願しました。
──現在取り組んでいるテーマは?
光合成では、気孔から二酸化炭素を取り込む必要があります。葉の中の湿度は通常100%であり、気温が高くなる日中は大量の水蒸気が気孔を介して逃げてしまいます。そこで、植物は日中、気孔を閉じて光合成速度を下げる傾向があり、気孔開閉の予測は作物の生育や森林の炭素吸収の予測にとって重要です。気孔の日中閉鎖の度合いは、気象条件だけでなく土壌水分や植物の生存戦略によっても大きく異なり、それぞれどの程度気孔のふるまいに影響するか分かっていません。そこで、現在、共通圃場で様々な樹種の稚樹を育て、土壌水分を制御したうえで気孔の開き具合(気孔コンダクタンス)の日変化を測定し、環境条件との関連や種・個体・個葉間によるばらつきを精査する作業を行っています。
──プログラムを通じて得たものは?
情報学のなじみがなかった分野の知識は難しい内容が多く、現在少しずつ身につけているところです。これまでも自分が今まで触れてきたフィールド研究発表にも使えそうな情報がありました。例えば、あるセンサーについて、設置した場所に行って手動でデータを回収しなければならないという話を聞いたことがありますが、このデータを遠隔通信で取得できればかなり効率的になる、ということなどを考えています。
──あなたにとってプラットフォームとは?(ご自分の研究をもととして)
作物や樹木が光合成速度を追いかけられるようなシステムを、日本中、世界中で作りたいと思っています。現在、世界の栄養資源や水資源、植生の分布や、植物の特徴と光合成能力の関連といった情報は蓄積されつつありますが、野外条件下で実際にどれほど光合成が行われているかはわかっていません。その情報を得ることで、作物管理や、気候変動予測の確実性の向上に大きく役立ちます。
──いまの世界をほんの少し良くしようと思ったら、何が必要だと考えますか? もしくは何をしたいと思いますか?
大変難しい質問で、簡単には答えられません。ひとつ、自分ができることとして、植物の光合成に関する面白い話題や重要な事柄をいろいろな分野の人に示していきたいと思っています。人間が食料や材料として利用している炭素のほとんどは植物が光合成で固定したものなので、光合成はどのような産業にも密着しています。どのような分野の人も、植物や光合成に関する知識を頭の片隅に置いてほしいと思います。
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