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2021.03.29

『スマートフォンとプラットフォーム学』


『スマートフォンとプラットフォーム学』

博士課程「プラットフォーム学卓越大学院プログラム」は、情報学研究科、農学研究科、医学研究科、防災研究所、公共政策大学院が連携。情報・通信技術を融合させた情報学と、情報やデータ創造し、価値創造を行う現場領域(農学、医学、防災等)および文系学術との系統的な連携により、「社会を駆動するプラットフォーム学」という新しい学問領域を育むのが目的です。

履修生を対象に3月29日に実施したオンラインセミナーは、このプラットフォーム学の事始めとしてプラットフォームとは何かについて自由に議論しました。また、世界中の人たちが使い、非常に身近な存在であるスマートフォンにフォーカスを当て、映画『GENERAL MAGIC』の特別上映会も開催しました。GENERAL MAGICは1990年代に画期的な思想のもと携帯端末の開発に取り組んだアップルの子会社であり、Androidの生みの親であるアンディ・ルービン、オバマ政権で米国CTOを務めたメーガン・スミス、アドビシステムズやアップルのCTOとなるケビン・リンチなど、のちに米国のICT業界で目を見張る業績を挙げた人物が参加していました。映画の中心となるトニー・ファデルはiPodの生みの親であり、スティーブ・ジョブズの「iPodに携帯電話を入れないとね」という言葉の元、iPhoneの開発にも協力した人物です。余談となりますが、アンディとファデルは隣の席に座って仕事をしていたそうです。

登壇者は元Twitter Japanの上級執行役員で、グッドイートカンパニー取締役CS兼日本政府観光局デジタル戦略アドバイザーの牧野友衛氏、ロボホンでも知られるロボ・ガレージ代表取締役の高橋智隆氏、角川アスキー総合研究所 代表取締役会長の福田正氏が登壇。京都大学プラットフォーム学卓越大学院 プログラムコーディネータの原田博司教授とともに、プラットフォームとは何か、日本のプラットフォームの課題は何かについて意見を交わしました。ファシリテーターはIT情報サイトアスキーの小林久総編集長が担当しました。

プラットフォーム学を考えるうえで重要なキーワードとなるのが「分断」です。スマートフォンは通信と計算機という異なる世界で発展してきた技術の分断を埋め、新しい世界を作った点が成功の理由だったと言えます。逆にGENERAL MAIGICはこの通信と計算機という分断の統合に取り組み、いまでは当たり前になっている「クラウド」という概念を生み出し、その活用に取り組みました。その成果としてハンヘルドコンピュータ(PIC)のMagicLinkやMagic CAP(CAPはCommon Application Platformの略)というソフトウェアのプラットフォームを世に出しましたが、時代背景や技術的な成熟度など様々な理由で両者のギャップに悩まされた企業と位置付けられるかもしれません。

パネルディスカッションではより大きな視点での示唆も得られました。高橋氏の「プラットフォームは部分の勝ち負けではないこと、そして日本の企業は負けた理由を明らかにしてこなかった」というコメントや福田氏の「プラットフォームはどれだけ外に広がれたが問われ、中に取り込まれたら負けとなる。半面、日本は個々の技術の完成度を高めることに注力し、その手伝いをしてきた」といった視点などはその一端を示すものとなりました。

プラットフォーム学卓越大学院では、今後もこうしたセミナーに各界の有識者を招き、さまざまな領域の間にある分断とそれを解決する手段としてのプラットフォームに何が求められるかを議論していきます。

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